●第6回 下世話な街の愉快な食べ物屋さんガイド
長岡&石埜の合宿生活中、何軒もの食べ物屋さんに大変お世話になった。
長岡建蔵の住むこの国際色豊かな街には、個性的なお店が非常に多い。
客層も相応に特徴的で、ガイコクジンばかりとか、しかも身内っぽいとか、
たとえ日本人がいても、ロウソ(ロウ・ソサイエティの略)な雰囲気を
漂わせた人ばかりだったりと、なかなかイイ感じである。
貴重な栄養補給源&気分転換&企画会議場所の提供等に役立ってくれた。
これらのお店には、いちいち御礼回りに行きたいほど。
そこで、感謝の念を込め、ここでいくつかのお店を紹介したいと思う。
ちなみに、ここに挙げる店名は我々が独自にネーミングしたものであり、
正式な店名はあまりよく覚えていないので、その旨ご了承を。
【電波とんかつ】
店内の壁を埋め尽くさんばかりに貼り紙が貼られた、愉快なとんかつ屋さん。
コピーや新聞の切り抜き、カレンダー等、多岐に渡る貼り紙の内容はというと、
ことわざ、標語、川柳、早口言葉、落語、古典文学、相田みつを等である。
視力検査表も貼られているのだが、これは客の位置からはうまく見えない。
店主がカウンターの中から使用する目的で貼られたものと思われる。
【民家そば】
民家の玄関そのままの扉を開け、靴を脱いでお邪魔する、敷居の高い蕎麦屋。
趣味が嵩じ、自宅を改造して始めた店らしい。朝11時から午後3時まで、
1日に4時間しか営業しないので、行こうと思っていても行きそびれがち。
ちゃんとした手打ちで、江戸前の穴子天丼が特に素晴らしい。クドいけど。
【ス○デ食堂】
ここだけ仇名がない。ディープな韓国メシ屋。ディープ過ぎて戸惑わされる
メニューも多いが、サムギョプサルは絶品だ。ここの街の韓国料理屋は
どこもそうなのだが、キムチ等の「オカズ10品盛り」がもれなくついてくる。
深夜は身内と思しき此方の国の方々が細々と団欒している光景を見かけるが、
客がいないと、オヤジは小上がりでくつろぎながらテレビを見ている。
【近(ちか)タイ】
「事務所から近い方のタイ料理屋」という意味。大画面プロジェクターで
民放テレビを楽しめる。店内の様子から見て、元・カラオケスナックであろう。
旨いしディープなのだが高価なのが玉に瑕……と思っていたら値下げした。
給仕をしている現地人の若い娘さんがちょっとかわいい。いつもローライズの
ジーンズを履いているので、そのたくましい脇腹は常連客の注目の的である。
【遠(とお)タイ】
「事務所から遠い方のタイ料理屋」という意味。ディープさでは近タイ屋に
遥かに勝り、常に現地人や関係者の家族でアットホームに賑わっている。
営業時間の気まぐれさ、品切れの多さが常連客泣かせ。行く前に電話して
営業しているかどうかいちいち確認していたのだが、ある日電話したら、
「この電話はお客様のご都合により現在使われておりません」になっていた。
たぶん、現在休業中。
【ヤクザとんかつ】
スキンヘッドでガタイのいい、職人っぽいオヤジがやっているとんかつ屋。
一見寡黙なようだが、常連客相手には饒舌。「背広着てクラブに行ったら、
この風貌から支店長にマークされてしまった」との発言に、とんかつを
頬張りながら2人して深く頷かされてしまったほどのコワモテぶりである。
見た目だけかと思いきや「あの店行って××ちゃんを指名したんだけど云々」
といったゲス系の話を、給仕する奥さんの眼前で堂々と言ってのける豪胆さも
兼ね備えている。ちなみにこのオヤジ、なぜかダンス業界の事情通らしい。
……と、以上は、もっぱら他の客との会話を盗み聞きして得た情報である。
表面張力寸前まで盛った熱々のシジミ汁を手渡しする奥さんも只者ではない。
まだまだあるが、今回はこれくらいで。
……さあ、怪談書かなきゃ。
石埜三千穂
※次回更新は来週中(3/5〜6ごろ)だと思います。