◇beginning◇
僕は斉藤芳樹。
さして成績がよいわけでも、人気があるわけでも、顔がいいわけでもない。
全くもって特徴のない、平々凡々な学生だ。
クラスでは透明な存在とでも言おうかね。
大概の出来事は僕の頭の上を素通りしていく。
要するに、居ても居なくても同じ。
イジメにあっているわけでもない。
わざわざちょっかいだすほど目障りな、否、目立つ存在ではないんだろうな、つまり。
大して面白くもない日常。だけど別に辛いってほどでもないな。
ぬるいぬるい温水プールを延々と回遊しているって感じ。
そりゃ、ちょっとふやけてきたけどね。
そんなもんじゃねえの。この世の人生における最大公約数ってのは。
そんなある日、遠縁の親戚である所の典子さんが言った。
「キミは……本当に今のままでいいのか?」
そんなこと、言われましてもね。
これは持って生まれた天分というものじゃないかな。
僕は僕に過度な期待はしないようにしてるんだ。
裏切られてばっかりだし。
「違う自分になりたくはないか?」
簡単に言うね。
そんなことができるならいいよ。
学園では成績トップ、
印象は明るく、
話題は豊富で女の子にはモテる、
スタイリッシュでおしゃれ。
なんだい、何もかも僕にはないものじゃないか。
アハハ、随分と絶望的だね。
「私なら、できるぞ。但し、一つ協力してくれればの話だが」
へえ。何を?”催眠術?”ははは。
そんなものでこの筋金入りの凡庸がなんとかなるもんですか。
それで?
成功したら?
典子さんの奴隷?
オーケー、オーケー。
なんでもいいよ。
昔から僕にとって典子さんはスーパーマンだった。
頭がよくて、なんでもできて、おまけにとんでもない美人ときてる。
パーフェクト過ぎて色んな意味でため息がでるね。
そんな人がなんとかしてくれるっていうんだから、きっと。
そうだ、これで僕は生まれ変わるんだ。
今までの僕とは違う、新しい自分として……。
……そして……。
……そして……。
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